バイクで起こる〇〇現象~サルフェーション

投稿日:2025-11-07

サルフェーション現象……聞いたことはありますか?特にハーレー初心者の方には、あまり馴染みのない用語かもしれません。

そこで今回は、「バイクで起こる〇〇現象」シリーズとして、サルフェーション現象について解説します。

 

サルフェーション現象はバッテリーで発生する!

楽しみにしていたツーリング当日、セルを回してもエンジンがうんともすんとも言わない……そんな経験はありませんか?バッテリーを新品に交換したばかりでも、しばらく乗らなかっただけで再びバッテリーが弱ってしまうことも。その原因として考えられるのが「サルフェーション現象」です。特にハーレーのような大排気量エンジン車両は、エンジン始動時に多くの電力を必要とします。そのため、このサルフェーション現象が厄介なトラブルとなる場合があるのです。

サルフェーションとは、鉛バッテリー内部で「硫酸鉛(PbSO₄)」が電極に結晶化してこびりつく現象です。バッテリーは、放電と充電を繰り返して電力を供給していますが、放電時に発生する硫酸鉛が充電の際に元の状態に戻らず、固まってしまうことがあります。これが「サルフェーション」です。ちなみに「サルファー」とは硫黄の意味です。

この結晶は一度できてしまうと簡単には除去できません。結晶が増えていくことでバッテリー内部の化学反応効率が低下し、充電しても電気をためる「容量」が減少したり、「内部抵抗」が上昇したりします。初期はわずかな劣化でも、繰り返されることで最終的にバッテリーが完全に使えなくなることもあります。

鉛バッテリーを採用しているハーレーは、この影響を受けやすいと言えるでしょう。特に長期間乗らない冬場や、通勤以外でしかバイクを使わない方にとって、サルフェーション現象は厄介な問題となりやすいです。

 

サルフェーションの原因と症状

サルフェーション現象が進行する主な原因は、放電したままバッテリーを放置することです。ハーレーはバッテリー容量が大きいものの、セルモーターが強力なため始動時の電力消費量も多く、しばらく乗らないだけでも電圧が下がりやすい傾向にあります。

また、近年のモデルではセキュリティシステムや電子制御ユニット(ECU)が常時微量の電力を消費しています。そのため、乗っていない間にも少しずつバッテリーの電力が減っていき、長期間放置すると内部の化学反応がアンバランスになり、硫酸鉛が固着してしまうのです。

サルフェーション現象が起きると、次のような症状が現れます。

  • セルの回りが悪くなる、空回りする。

  • ヘッドライトの明るさが不安定になる。特にアイドリング時に暗くなる。

  • 充電してもすぐ電圧が下がってしまう。

  • テスターで計測しても電圧はあるがエンジンを始動できない。

最後の「電圧はあるのにエンジンを始動できない」状態は、バッテリーの劣化が進行し、サルフェーションが進んでいる証拠です。電圧計だけを頼りにしていると、トラブルの前兆を見逃してしまうことが少なくありません。

特にハーレーの場合、エンジン始動時に必要な電流が国産バイクよりも多いため、少しの内部抵抗でも始動性に影響が出ます。夏は問題なく動作していても、秋や冬の朝に突然セルが回らなくなることも珍しくありません。これがサルフェーション現象による典型的なトラブルです。

 

サルフェーションの対策と予防

サルフェーションを完全に防ぐことは難しいですが、対策次第で発生を大幅に抑えられます。

最も効果的なのは定期的な充電です。少し面倒ですが、手間も費用もあまりかかりません。サルフェーション対策はこれが基本です。理想は週に一度エンジンをかけてしっかり走ることですが、それが難しい場合は定期的に充電してあげましょう。

また、保管環境の見直しも重要です。湿度が高く、温度変化の大きな場所ではバッテリーの自己放電が進みやすくなります。特に冬場の屋外保管は要注意で、電圧低下が急速に進行することもあります。当コラムでも何度か紹介していますが、冬季に長期間乗らない場合は屋内で保管するのが理想的です。バッテリーを満充電したうえで車体から取り外し、室内で保管すると良いでしょう。

すでにサルフェーションが進行してしまった場合は、バッテリーを交換するしかありません。その際は信頼性の高い社外品、特にAGM(吸着ガラスマット)タイプやリチウム系バッテリーを選ぶのもおすすめです。ただし、リチウム系を選ぶ場合は、車種や電装系との適合性を必ずご確認ください。

もちろん、最高のサルフェーション対策は「定期的にハーレーに乗ること」です。一定の距離を走行することで、サルフェーションのリスクを大幅に減らせます。これから寒くなりますが、秋から冬はハーレーにとっても快適な季節です。サルフェーション対策も兼ねて、ぜひハーレーに乗って楽しんでください!

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