マフラーに詰まるゴミ…ではなく高級素材”カーボン”についてのお話

投稿日:2019-08-02

バイカーさんなら「マフラーにカーボンが溜まってしまった……」なんてよく使ったりします。それはそれで間違いではありませんが、今回は同じカーボンでも高級素材カーボンのお話。

基本の基からご説明して行きたいと思います。

 

そもそもカーボンってなんだ?

基本の基と書いたからには、カーボンとは何か、そこから始めて行きます。

カーボンとは、元素としての炭素(C)のことであります。これは中学校で学習した、あの炭素原子のことですね。

また、ガソリンが不完全燃焼を起こしたときの”すす”もカーボンと呼ばれます。マフラーエンドに積もってしまう真っ黒の汚れ、あれがカーボンです。なので冒頭に記述した「マフラーにカーボンが溜まる……」は正解と言えます。

また工業材料としての”すす”もカーボンと言います。

 

カーボンは繊維として製品に適用される

さて、カーボンが炭素だということは分かりましたが、それそのものでは黒い粉でしかありません。これがどうやって製品に使われるのか申しますと、それは炭素繊維(カーボンファイバー)とされて、製品化されるのであります。

カーボンファイバーは、有機繊維を不活性雰囲気中で蒸し焼きにして、炭素以外の元素を脱離させて作ります。知っている人にとっては当たり前でしょうが、カーボンと言えばTORAY(東レ)。東レはPAN系カーボンファイバーのNo.1企業なのであります。

 

カーボンファイバーは軽くて強い!

続いては、カーボンファイバーの特長をお伝えします。それは……東レさんのウェブサイトから引用させていただきます。世界No.1ですからね……

炭素繊維の特徴は、何と言っても軽くて強いこと。比重が1.8前後と鉄の7.8に比べて約1/4、アルミの2.7あるいはガラス繊維の2.5と比べても有意に軽い材料です。その上に強度および弾性率に優れ、引張強度を比重で割った比強度が鉄の約10倍、引張弾性率を比重で割った比弾性率が鉄の約7倍と優れています。これが、炭素繊維が従来の金属材料を置き換える軽量化材料として本命視されている理由です。その上に疲労しない、錆びない、化学的・熱的に安定といった様々な特性を有し、厳しい条件下でも特性が長期的に安定した信頼性の高い材料となっています。

ということで、「軽くて強い」。そのうえ「錆びない、化学的・熱的に安定している」と……これは素晴らしいとなって当たり前なのであります。

 

CFRPってなんだ?

ここまでに、カーボンそのものから、カーボンファイバーへと、説明してきたわけですが、私達バイカーが触れるカーボン製品は、実は単なるカーボンファイバーではありません。そう、炭素繊維強化プラスチック=CFRPと呼ばれるものが、私達にとってのカーボン製品なのです。

CFRPというのはCarbon Fiber Reinforced Plasticの頭文字。母材には主にエポキシ樹脂を用いて、そこに強化材としてカーボンファイバーを用いた、繊維強化プラスチックのこと、なのであります。だから「このパーツ、カーボン製品なんだぞ!」などと自慢しちゃったりしていますが、CFRP製品も立派にプラスチック製品の一種なのであります。

で、CFRP製品の何が偉いのか、と言えば……それはカーボンファイバーの特徴と同じ。やはり軽くて強い、錆びない。そのうえ化学的・熱的に安定しているのであります。ということで、これが高く評価されて、今では航空機の胴体・主翼・尾翼などの構造材料として使われたり、自動車産業やモーターサイクルでも使用されているのであります。

 

ドライカーボンとウェットカーボンのお話

ところが……CFRP製品にも弱点がありまして……それが製造するのが大変=お金が掛かる、ということ。一般的なプラスチック製品のように、型に射出してポンっと出来るわけではないのです。CFRP製品を作るには、プレプリグ(母材と炭素繊維を馴染ませたもの)を型に入れて何層も張り込んで行き、真空にして加圧しながらエポキシを吸い出し圧着する、という作業が必要になるのであります。だから非常にお手間も掛かりますし、高価になります。この製法で作られるものは、ドライカーボンと呼ばれるます。ドライカーボン製品は、超高級スポーツカーのフレームに使うことができるほどに強固です。モーターサイクルの世界では、ホイールや、フレームなんかにも使われています。

そこで、CFRP製品の良さを確保しつつ簡単に作れないか、ということで近年注目されているのが、ウェットカーボンと呼ばれるもの。クルマのドアミラーとか、強度は割とどうでもよく、見栄えが重要、という部分に使われ始めています。このウェットカーボンは、今、自動車産業界が注目している最新素材でして、特にモーターサイクルの前後フェンダーやサイドカバーなどの外装に適していると思われます。

 

カーボン製品の低コスト化に期待!

ということで今回は、バイカーが大好きなカーボンについてご説明してみました。

ウェットカーボンの登場により、今後はカーボン製品がより安価になることが期待されています。そうなったら……筆者もカーボンパーツを使ってみたいと思います(笑)

 

参考-東レ
このページのTOPへ