メンテナンスの必須アイテム「グリース」の種類と使用用途

冬になるとバイクに乗る機会がメッキリと減ってしまうヘッポコライダーの筆者ですが……代わりに増えるのがメンテナンスであります。
今回は、そんなメンテナンスの必須アイテムである「グリース(グリス)」について、その種類と使用用途について、ご紹介してみたいと思います。
グリースって何だ?
そもそもグリースとは何かと申しますと……それは液体でも個体でもない、半固形の潤滑剤のことを指します。で、割と奥まった日の目を見ないような所にヒッソリと、ネッチョリと使われています。例えば、ホイールハブやステアリングステムなんかに塗られていて、長期間の潤滑に供されているわけです。だから、液状ではなく、半固形とされているのであります。
ちなみに機械用語としてのグリースは、日本工業規格(JIS)にて、潤滑油中に増稠剤(ぞうちょうざい)を分散させて半固体または固体状にしたもので、特殊な性質を与える他の成分が含まれる場合もある、とされています。
ここで出て来た難しい専門用語が増稠剤ですが、この増稠剤とはグリースを構成する物質のうちの一つです。潤滑油(基油)という潤滑の役割を負う物質を、均一に拡散させるのが、この増稠剤の役割。また、グリースに特別な役割を付与するために、添加剤が加えられているグリースもあります。
増稠剤別に見たグリース
ということでグリースは、そこに加えられている増稠剤によって、大きく二つに分けることができます。それが、金属石鹸系グリースと、非石鹸系グリースであります。ややこしいことに、それぞれが幾つかに分類されますので、その名称と大まかな特徴を記しておきます。
金属石鹸系グリース
リチウム石鹸グリース:通称リチウムグリース。その名の通り、リチウム石鹸が増稠剤として使われています。その特徴は、耐水性・耐熱性・機械安定性に優れており、万能グリースとしてベアリング、潤滑箇所、摺動部など、幅広い用途に使われています。
カルシウム石鹸グリース:通称シャーシーグリース。カルシウム石鹸が増稠剤として使われています。耐水性に優れる一方、耐熱性は乏しいです。車両の足回りや比較的低速・低荷重の一般的な潤滑箇所や摺動部に適しています。
二硫化モリブデングリース:リチウムグリースに二硫化モリブデンを配合することで、耐荷重性能を向上させたグリースのこと。二硫化モリブデンが金属面に付着することで油切れや荷重が不均一に掛った際に起こる”かじり”、”磨耗”、”焼付”を防ぐことができ、長期間の給脂を可能としています。そのため、高速、高荷重の潤滑箇所や摺動部に使用されます。
品番:720258
メーカー:SUMICO
価格:¥1,020 (税込)
コチラは当店で販売している二硫化モリブデングリース。ディスクブレーキ用の潤滑剤です。高温と極圧に耐える二硫化モリブデン他、各種固体潤滑剤を配合しているため、少量塗布するだけでブレーキの鳴きと摩耗を防止します。また高温部のかじり防止、各部ボルトのトルク管理にも使えます。
・シムとフリクションパッドの当たり前、パッドとキャリパーの当たり面などに
・エキゾーストボルトなど高温部のネジのかじり、焼き付き防止に
※パッドとディスクの当たり面には絶対に塗布しないでください。
非石けん系グリース
ウレアグリース:増稠剤にウレア結合を2個以上持つ化合物を含んだグリースのこと。
基油別に見たグリース
ここまでは増稠剤別にグリースを分類しましたが、それとは別に、基油別でもグリースを分類することができます。
基油は精製方法によって大きく二つ、鉱油系と合成油系とに大別できます。鉱油系の基油は、石油を精製したもの。また合成油系の基油は、化学合成により製造されたものです。以下、それぞれ代表的なグリースについて簡単に説明を続けます。
鉱物油系グリース
石油から精製された鉱物油系部リースは、パラフィン系とナフテン系に分類できます。共にお値段がお手頃で適度な性能を有しているので広く使われています。
合成油系グリース
シリコーン系合成油:熱や酸化に対する安定性が優れており、さらに広い温度の範囲で使用が可能という特徴を有しています。ただし、鋼対鋼の境界潤滑性には劣ります。
品番:253960
メーカー:SUMICO
価格:¥1,925 (税込)
当店で販売しているシリコングリース。優れた化学的安定性を有し、樹脂やゴムを侵しにくく、ディスクブレーキのシム部など車輌のブレーキの様々な潤滑箇所に使用可能です。
・ディスクブレーキのピストン、シム
・ドラムブレーキのバックプレートとシュー当たり面、レバー摺動部、ネジ部
・マスターシリンダー、ホイールシリンダー
・各部ゴムOリング、シールなどに
フッ素系合成油:耐熱性と酸化安定性に最も優れた最高級のグリースであると言われています。ただし、お値段もそれなりにします。
グリースは適材適所で選ぶべし!
ということで今回は、ササっと済ますはずが、かなり理屈っぽい記事になってしまいましたが、グリースとは何ぞや、どんな種類があるのか、などについてまとめました。
グリースは適材適所で選ぶべし、というのが今回の結論です。分からなければ、プロショップに選び方のコツを聞くと良いかなと思います!