バイクで起こる〇〇現象~ケッチン

当コラムでは、バイクで起こる様々な現象を説明しています。前回は「アフターファイヤー」を取り上げました。
今回は、旧車オーナーなら誰しも一度は経験したことがあるであろう「ケッチン」について解説します。
ケッチンとは?
ケッチンとは、キックスタート時にキックペダルを蹴り下ろした瞬間、点火タイミングの狂いや進角装置の不良などにより、エンジンが逆回転してキックペダルが跳ね上がる現象です。
キックスタート式の車両のオーナーにとってはかなり切実で危険な現象で、跳ね上がったキックペダルがすねなどに当たると、非常に強い痛みを感じます。場合によっては、骨折、脱臼、腱の断裂などの重傷を負う可能性もあります。
一般的な排気量の車両では、車両の不調や整備不良が原因となることが多いです。しかし、大排気量エンジンを搭載するハーレーの場合は、より注意が必要です。正しく調整され、ベテランオーナーが始動すれば一発で始動するような車両であっても、キック力が十分でない場合や、キックの仕方の僅かな違いにより、ケッチンが発生する可能性があるからです。
ケッチンの原因
ケッチンは、点火タイミングの不適切さ、進角装置の不良、点火プラグやプラグコードの不良など、車両側の要因が原因となる場合があります。
また、キックのタイミング(力の入れ方)の悪さやキック力不足など、ライダー側のキック始動操作が原因となる場合もあります。
ケッチンを防止する対策
原因が分かれば、次は対策です。ただし、ケッチンを100%防止するのは困難です。車両側が適正であっても、バイカーのキック操作に不具合があると、ケッチンが発生してしまうからです。とはいえ、発生する可能性を減らすことは可能です。以下に対策方法を示します。
まず、ケッチンが頻繁に起こる場合は、点火タイミングを適切に合わせることが重要です。進角装置が正しく作動しているか確認し、必要に応じて新品に交換しましょう。また、スパークプラグ、プラグコードに不具合がないか確認し、こちらも新品に交換することをお勧めします。
さらに、吸気系に問題があり始動性が悪化している場合もあります。例えば、急激に気温が上昇した際に吸気系のセッティングを変えると、混合気が濃くなったり薄くなったりして、始動性が悪化し、ケッチンを引き起こすことがあります。そのため、吸気系のセッティングを改めて確認し、適正な状態に調整しましょう。
ケッチン予防で必ず行うべきことは、始動性が良い状態を保つことです。
次にバイカー側が行う対策として、以下の点に注意しましょう。
・余計な混合気が入っている時には無理にキックをしない。
これが最も重要です。点火タイミングが適正で、点火系パーツ、燃料系が正しくセッティングされていれば、始動性は良好なはずです。あとは、正しくキック操作を行えば、ケッチンを起こすことなく始動できます。
それでも稀に、エンジンが始動しないことがあります。そのような時、焦って連続してキック始動を繰り返すと、燃焼室内に混合気が溜まり、これが不適切なタイミングで爆発してケッチンを引き起こす可能性があります。そのため、何度かキックして始動しない場合は、少し時間を置いてから再始動を試みましょう。そうすることで、シリンダー内の余計な混合気が気化してなくなることが多いです。