キルスイッチを使う場面や歴史について学ぼう!

「初心者あるある」ですが、キルスイッチをオンにしたままでエンジンがかからなかった、という経験はありませんか。お恥ずかしながら、筆者にもその経験があります……。
では、ハーレー初心者の皆さま、キルスイッチが何のためにあるのかご存知でしょうか?
キルスイッチとは?
キルスイッチとは、一般的に右側ハンドルスイッチの上部に搭載されている赤いスイッチのことで、正式名称は「エンジンストップスイッチ」です。
最近では、セルボタンと共用されている場合もあり、「時計回りの矢印→の中にバツ×」マークを押すことで、エンジンを停止させることができます。
キルスイッチがなぜ装備されているかというと、どのような状況でも簡単かつ確実にエンジンを停止できるようにするためです。元々はレーシングマシンに採用されていた機構ですが、市販車にも、転倒時などにエンジンを停止して安全を確保する必要があるため、搭載されるようになりました。
年代別ハーレーのキルスイッチの仕組み
もちろん、ハーレーにもある時期からキルスイッチが装備されています。年代によってその仕組みが異なりますので、簡単にご説明します。
ハーレーにセルスターターが搭載されたのは、1965年のエレクトラグライド以降です。それ以前の1960年代のハーレーには、キルスイッチは装備されていませんでした。
1970年代になると、ハーレーも日本車にならい、また法規制の影響もあり、キルスイッチが搭載されるようになりました。ハンドル右側に赤い「RUN/OFFスイッチ」が追加され始めたのです。仕組みは単純で、「点火回路(IGN)への電源ラインを遮断」するだけです。
1980年代から1990年代(エボリューション期)になると、基本構造は1970年代と同じですが、配線が整理され、スターターボタンと一体型のハウジングリレーを経由してセルスターターや点火系を制御する方式に変わりました。スイッチ自体は点火系統の「主電源ライン」をON/OFFする役割を担っています。この時代は、まだ機械式スイッチとリレーが主流でした。
2000年代(ツインカム期)に入ると、ECM(エンジンコントロールモジュール)が導入され、キルスイッチはECMへの信号入力装置となりました。直接イグニッションコイルを切るのではなく、ECMが「IGN OFF」の指令を受けて、燃料噴射や点火を停止する仕組みです。また、セルスタートとも連動し、「RUN」位置でなければスターターリレーに電流が流れないようになっています。
2010年代から現在(インジェクション/セキュリティ統合)では、仕組みが完全にCANバスやECU制御へと進化しました。キルスイッチは、ECUに対し「RUN/OFF」信号を送るだけの入力デバイスとなり、ECUが燃料ポンプ、点火、インジェクターを一括して制御・停止します。スマートキーやイモビライザーと連動し、FOBキーがないと「RUN」位置でもエンジン始動ができません。キルスイッチはあくまで「緊急停止スイッチ」としての意味合いが強くなりました。
キルスイッチはいつ使うのか?
キルスイッチは、簡単かつ確実にエンジンを停止させたい時に使うと説明しましたが、具体的にはどのような場面が考えられるでしょうか?
必ず覚えておいていただきたいのは、転倒時の利用です。万が一、転倒してしまうと、ライダーはパニックになりがちです。そんな時でも、まずキルスイッチを操作してエンジンを停止させましょう。その後で車体を立て直せば、安全を確保した上で復帰できます。
次に想定されるのは、スロットルワイヤーが切れてしまった時です。戻り側のスロットルワイヤーが切れると、どれだけアクセル操作をしても、メインキーでエンジンを停止できない場合があります(キルスイッチの構造によっては可能な場合もあります)。このような時も、キルスイッチを作動させることで安全にエンジンを停止できます。
また、料金所などでギアを1速に入れたままキルスイッチを使ってエンジンを停止する、という裏技もおすすめです。ニュートラルに入れずとも両手をハンドルから離すことができます。再始動時もクラッチを握ってセルボタンを押すだけでOKです。
マグネトー用のキルスイッチもある
最後に、当店ネットショップで取り扱っているマグネトー用キルスイッチをご紹介します。これを装着することで、マグネトー点火の車両でもキルスイッチを利用できるようになりますので、オススメです!
モーリスマグネトー用キルスイッチレバー KSL
品番: 3119-0010
メーカー:MORRIS MAGNETO
価格:¥2,910(税込)
適合:モーリスマグネトー用
マグネトー本体に取り付けるコンパクトなキルスイッチレバーです。配線を極力減らしたい場合にも便利なアイテムです。