ハーレーエンジンのアイコニック!プッシュロッドの役割って何?
ハーレーのエンジンを象徴するアイコニックな存在が「プッシュロッド」です。直接バルブを動かすわけではありませんが、エンジン内で重要な役割を担うこの部品は、まさにハーレーエンジンの象徴ともいえる存在です。
今回は、プッシュロッドとはどのような部品なのか、また現代のバイクでは珍しくなりつつあるOHV(オーバーヘッドバルブ)方式をハーレーがなぜ堅持しているのかについて、詳しく解説いたします。
プッシュロッドはどのような役割を果たしているのか?
プッシュロッドとは、クランクケース内に設置されたカムシャフトの動きを、シリンダーヘッド上部のロッカーアームへ伝達する細長い棒状の部品です。カムシャフトが回転するとカム山がタペットを押し上げ、その動きがプッシュロッドに伝わります。さらにプッシュロッドの動きがロッカーアームを介して吸排気バルブの開閉を行います。そのためプッシュロッドを持つエンジンは「OHV型式」と呼ばれています。
OHV型式のエンジンは、現在主流のOHCやDOHCと異なり、カムシャフトをシリンダーヘッドではなくエンジンの下部(腰下)に搭載しています。プッシュロッドの上下動でバルブを作動させるため、特にシリンダーヘッド周辺の構造がシンプルになる点が特徴です。
その一方で、プッシュロッドという大型の金属部品の動きを経てバルブを駆動するため、関連部品には高い精度と強度が要求されます。プッシュロッドの長さや強度、さらには素材の選定がエンジン性能に大きく影響するため、ハーレーは長い歴史の中でそのノウハウを培ってきました。
ハーレーのプッシュロッドが“特別”な理由
歴史を振り返ると、ハーレーは当初からOHVエンジンを製造していたわけではありません。ご存知の方も多いと思いますが、かつてはSV(サイドバルブ)式エンジンも採用していました。

転機となったのが、1936年に登場したナックルヘッドエンジンです。ナックルヘッドは高性能化を図る4気筒エンジンが流行する中で、ハーレー独自のVツインをより高回転仕様とするために開発されたモデルで、ここからプッシュロッドの歴史が始まります。ナックルヘッドに搭載されたプッシュロッドは、現在もハーレーの伝統を象徴する重要な存在となっています。
ハーレーのプッシュロッドの特徴として、まず見た目からも明らかなように太く長いことが挙げられます。これはVツインエンジン特有の前後シリンダー配置のため、それぞれのプッシュロッドの角度や長さに制約があり、結果として非常に頑丈なシャフトが必要となっているのです。
また、ハーレーのエンジンは大排気量・低回転でトルクを発生させる設計思想のため、プッシュロッドが受ける負荷は大きく、そのため高い耐久性が求められてきました。一般的にはスチールやクロモリ製が主流ですが、近年はアルミの組み合わせによる軽量化も見られます。アフターマーケットではクロモリ製プッシュロッドが定番です。
さらに、ハーレーのエンジンは伝統的に油圧タペットを採用しているため、温度変化によるクリアランス調整が不要です。自己調整機能を持つこの構造は、ライダーが頻繁にバルブクリアランスを調整する必要を無くし、長距離ツーリングが多いハーレーの使い方にぴったり合致しています。
なぜハーレーはOHCエンジンを採用しないのか?
「なぜハーレーはOHC(オーバーヘッドカムシャフト)エンジンを採用しないのか?」という疑問を持つ方も多いかもしれません。現代のほとんどのバイクがOHCやDOHCを導入している中で、ハーレーだけがOHV方式を堅持し続けているのです。もちろん技術的にOHC化が不可能なわけではなく、ハーレーのエンジニアが試みなかったわけでもありません。
実際、レボリューションマックスエンジンではDOHC4バルブが採用されており、今後ハーレーでDOHCエンジンが普及していく可能性も考えられます。
それでも現時点でハーレーがOHVエンジンにこだわりを見せている理由は、ブランドの核となる「独特の鼓動感・フィーリング・機械的メカニズム」がOHV方式ならではのものであるからです。
OHV方式はカムシャフトがエンジン下部にあるため、クランクシャフトを中心とした回転系の慣性バランスが独特です。バルブ駆動系の質量も大きくなるため、OHCやDOHCに比べて高回転域を苦手としますが、一方で低回転域では粘り強いトルクや、クランクから伝わるパルス感が際立ちます。この独自の「乗り味」がハーレーの大きな魅力のひとつです。
また、OHC化するとシリンダーヘッドが大型化してしまい、ハーレーならではの美しいエンジンシルエットや燃料タンクとエンジンの間隔など、絶妙なデザインバランスが崩れてしまう恐れがあります。ハーレーはエンジン性能の数値だけでなく、完成された外観やブランドイメージまでをも大切にしているのです。プッシュロッドという古典的な部品こそが、ハーレー哲学の象徴と言えるでしょう。
OHVエンジンの弱点と、それでも選ばれる理由
プッシュロッドを持つOHVエンジンには弱点も存在します。高回転性能ではOHCやDOHCには及ばず、バルブ駆動系が重くなることで燃費やスロットルレスポンスにも影響が出ます。
しかし、その“弱点を隠さない”という姿勢こそがハーレーの真骨頂であり、ゆったりとしたエンジン回転と心地よい鼓動の源泉でもあります。シリンダーヘッドまで伸びるプッシュロッドシャフトがロッカーアームを介してバルブを静かに叩く――そのアナログなメカニズムこそが、現代の電子制御満載バイクとは異なる、ハーレーならではの特別な魅力なのです。
プッシュロッドを守るためにはオイル管理が重要!
最後にメンテナンス面についてご案内いたします。
プッシュロッドは決して頻繁に故障する部品ではありませんが、オイル管理が悪いとタペットノイズ増大やバルブ動作の悪化を招くことがあります。OHVエンジンはオイルの質に非常に敏感なため、適切な粘度と交換サイクルを守ることが重要です。
もしアイドリング時にカチャカチャと異音が出る場合は、油圧タペットの作動不良やプッシュロッド周辺の摩耗が考えられますので、早めに点検を受けることをおすすめします。
それでは最後に、当店で販売しているプッシュロッド関連パーツをご紹介いたします。
プッシュロッドカラー ブラス ランダムセット
品番:PA-021
メーカー:PARASITE
価格:¥15,400(税込)
サイズ:高さ 25mm、内径約 27〜29π
適合:ナックル、パン、ショベル、エボ、ツインカム
最初にご紹介するのは、東京葛飾区のアパレル&ジュエリーショップ“PARASITE”製の「プッシュロッドカラー」のブラス 。
1つ1つ職人の手作りですので、ディティールにこだわった商品です。エンジン回りのアクセントとしておすすめです。デザインは全6種類ですが、こちらは1種類ずつ異なるデザインが入ったランダムセットです。既存のセットもおすすめですが、あえてデザインの異なるもので組むのもおすすめです。
デザインは選べません、写真はサンプルになります。その都度ランダムで4種の組み合わせになります。予めご了承ください。
プッシュロッドカラー クローム ランダムセット
品番:PA-022
メーカー:PARASITE
価格:¥17,600(税込)
サイズ:高さ 25mm、内径約 27〜29π
適合:ナックル、パン、ショベル、エボ、ツインカム
続いてご紹介するのは、同じ“PARASITE”製「プッシュロッドカラー」のクロームです。デザインは全6種類ですが、こちらは1種類ずつ異なるデザインが入ったランダムセットです。既存のセットもおすすめですが、あえてデザインの異なるもので組むのもおすすめです。
66-79年BT用プッシュロッドカバーキット
品番:11-0900
メーカー:V-TWIN
価格:¥27,170 (税込)
サイズ:高さ 25mm、内径約 27〜29π
適合:1966-79年ショベルヘッド
最後にご紹介するのは本格派!V-TWIN製コンプリートプッシュロッドキット。クロームメッキ仕上げ、純正レプリカタイプです。
取り付けはプッシュロッドの取り外し・組み付け調整が必要なため必ず専門業者にご依頼下さい。




