ハーレーの超ご先祖様!オホッツバルブって何?

今回は旧車も旧車、第一次世界大戦前から使われていたエンジン形式についてのお話。ハーレーの超ご先祖様が搭載していたエンジンに、”オホッツバルブ”と呼ばれるものがあります。FヘッドやIOEとも呼ばれるものです。
今回は、そんなオホッツバルブについて、ご紹介してみたいと思います。SVエンジンならばDIYでオーバーホールした経験がある筆者ですが、オホッツバルブは文献で見掛けたのみですので、ちょっと内容浅いかもですが、どうぞ最後までお付き合いください……。
オホッツバルブってなんだ?
でですね、オホッツバルブというのはエンジン形式の一つのこと。
現行のハーレーは基本的にOHVであることは、ご存知の通り。ご覧の”おにぎり”あるいは”げんこつ”みたいなシリンダーヘッドが特徴のナックルヘッドもOHVですし、パンヘッドやエボリューションもOHV。OHVとは、Over Head Valve、つまり、バルブがシリンダーヘッドの上にあるよ、ということです。
知っている人は怒らないで読んでくださいね……で、カムシャフトはクランクシャフト近く、つまりクランクケース内に収められています。カム山の高さに応じてプッシュロッドという仲介役の棒がニョキ・ニョキと上がったり下がったりして、(ロッカーアームを介して)バルブを開閉させる……これがOHVであります。
OHVエンジンは、バルブをシリンダーヘッド上にできるので、燃焼室形状や吸気経路を自由に設計できるので、出て来た当時は高性能エンジンの代名詞だったわけです。で、このOHVの前に使われていたのが……
コチラのサイドバルブエンジン。写真は生憎Kモデルのエンジンなので比較的新しい時代のものですが、ハーレーでは第二次世界大戦前のモデルであるU系に搭載されており、第二次世界大戦後にも引き続き採用されていました。
このサイドバルブ(SV)エンジンは、バルブがシリンダー脇に配置されているため構造が極めて簡単。頑丈かつメンテナンス性が良く、そして生産コストも低かったと思います。が、時代は常に高性能化を求めますから、ハーレーでも、エンジンはOHVに変わって行ったのであります。
さて、ようやく到着したのが、オホッツバルブです。「Opposed Valveが語源だ!」とも聞いたことがありますが、アメリカの方は、この形式のエンジンを”Fヘッド”あるいは”IOE”と呼んでいます。
では、オホッツバルブがどんなエンジン形式なのかと申しますと……写真をご覧ください!これでは何も分かりませんね……
コレでドヤ!1915年に初めてハーレーが製造した、Package Truckでございます。このエンジンをご覧ください!
吸気側にはプッシュロッドが見えておりまして、排気側はサイドバルブ。つまり……サイドバルブとOHVの中間に位置する構造となっておるのです。ということで、コレでお終いにしても良いのですけど……少し余談。
実はオホッツバルブ形式はサイドバルブの後に登場したわけではなくて、モーターサイクルの黎明期には世界的に一般的なエンジンだったのであります。フランスのド・ディオンも採用していたくらいです。それには理由がありまして……黎明期の4ストロークエンジンは、吸入側は負圧のみでコントロールしていて、バルブタイミングを機械的に操作していなかったのです。
それから時を経て、高性能化が求められるにつれて「吸気バルブも正確に開閉させたいね!」ということになって登場したのが、吸気バルブを機械的に開閉できるオホッツバルブなのです。