【マニアックの境地】これってハーレーなの?伝説のバイク「Crocker」

投稿日:2020-04-24

アメリカ製モーターサイクルの象徴はハーレーである……近年はインディアンによる追撃が見られるものの、そう断言して構わないはず。なのですが……特に第二次世界大戦前には、アメリカには幾つかのモーターサイクルメーカーが存在していました。

今回は、そんな今や伝説となったメーカーの一つ、“Crocker”についてご紹介して行きます。

 

「Crocker」は第二次世界大戦前に存在したアメリカンのバイクメーカー!

この強烈なインパクトを放つレーシングバイクがCrocker(以下、クロッカー)。クロッカー(Crocker Motorcycles)とは、アメリカの発明家、アルバート・クロッカー氏(1882–1961)が創設したモーターサイクル・メーカーのこと。

クロッカー氏は、ノースウェスタン大学で工学の学位を取得後、これまたアメリカモーターサイクル史上に燦然と輝く名門、Aurora Automatic Machine Companyに就職。オートバイ部門のエンジニアとして働きました。オートバイとレースは彼の趣味でもあり、多くのレースに出場して優勝を飾っています。

いきなり余談ですが、このAurora Automatic Machine Companyというのは、1880年代にイリノイ州に設立した金属加工会社でして……なんと驚くべきことに同社には、今回の主人公であるアルバート・クロッカー氏の他に、後にインディアンの共同創設者となったオスカー・ヘドストローム氏、インディアンのチーフデザイナーとなったチャールズ・ヘンディー氏、さらにはハーレー・ダビッドソンで創設者ウィリアムを補佐したビル・オッタウェイが在籍したのであります!

早い話、後のアメリカン・モーターサイクルを生み出したのは、このAurora Automatic Machine Companyなのであります。

 

さてさて話を戻しますと、この間に生まれた、クロッカー氏とヘドストローム氏、ヘンディー氏との友情により、後にクロッカー氏はインディアンで働くことになります。

その後、私生活では結婚し、また仕事ではインディアン販売店を複数経営して、いよいよクロッカーは西海岸へと向かいました。

 

ロサンゼルスでも、クロッカーはインディアン販売店(ディーラー)のフリードインディアンを買収。多くの時間、自身のレーシングバイクの設計と開発に費やした結果、1931年に彼らはダートトラックレーシングバイクを披露したのであります。

そんなクロッカー『30-50 CU』は、ご覧のような単気筒のスピードウェイバイク。スピードウェイレースが最高潮に達していた時代にあって、それは西海岸最高のライダーが選択するレーシングバイクとなったのであります。クロッカーは最終的に約30台を製造したようです。

そして……フリードインディアンを売却して、遂にロサンゼルス下町にあるヴェネツィアブルバード1346の小さな工場で、クロッカーモーターサイクルカンパニーを設立したのです。

 

そして……1930年代半ば、クロッカーは大排気量&高性能なOHVエンジンを搭載した市販Vツインモデルに取り組み、なんとハーレーのナックル登場より先に、市販することに成功しているのです。

クロッカーツインは、世界で最も速い市販モーターサイクルとして広く認められていました。そして1939年、クロッカーは『ビッグタンク』という新しい改良モデルを発表しました。しかし……第二次世界大戦突入を控えた恐慌を迎え、残念ながら1942年にオートバイの生産を中止したのでした……。

さて、結婚したクロッカーには、息子のアルJrがいます。1998年、アルJrは亡くなった父親に代わり、名誉あるオートバイ殿堂入りに出席して、メダルを受け取りました。また、クロッカーが生産した多くのモーターサイクルが現存しており、今日最も高く評価されているコレクターバイクの一つとされています。

 

「Crocker」が復活している!

そんなクロッカーが……なんと生産を再開した、と言われたのが数年前のこと。

 

新たに設立された別会社のクロッカーが1997年に部品の生産を開始。多くの高品質パーツに対して熱狂的な支持を受けた結果、1999年1月にクロッカーモーターサイクルカンパニーが正式に設立されたのです。『ビッグタンク』と『スモールタンク』の両方の完全かつ正確な複製を製造するために必要な、すべての部品を制作することを目指していました。

最新の測定および機械加工技術を組み合わせることにより、オリジナルと全く同じ部品を製造しています。品質管理のためにCMM部品測定を使用。またCNC機械加工技術を駆使して、各部品の正確さを保証しました。そして2012年10月、限定生産の受注を開始したのであります。このレプリカされたクロッカーは、世界中のモーターサイクル誌で取り上げられたので、ご存知の方もいらっしゃるかも知れません。

そして現在……本稿執筆のため同社ウェブサイトを覗いてみたのですが……残念ながら開店休業なのか、なんなのか……更新は止まっており、筆者からの問い合わせにも回答がありませんでした。事業が継続されていることを心から願います。

 

参考-クロッカー
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