【不朽の名作エンジン】〜サイドバルブ・フラットヘッド編〜

投稿日:2024-03-26

ハーレーのエンジンと言えばVツインですが、バルブ駆動方式に注目すると、実は紆余曲折を経てきたことをご存知でしょうか?そこで今回は、歴代ハーレーエンジンの中で最も長く生産された名機「サイドバルブ・フラットヘッド」をご紹介します。

 

ハーレーの当初のエンジンはIOE(インテーク・オーバーヘッド・エキゾースト)

本題に入る前にサイドバルブ・フラットヘッドエンジン以前のお話をしますと、ハーレーダビッドソン初となるモーターサイクルが市販されたのは1903年のことです。

当時は自慢のVツインではなく、ご覧のように単気筒エンジンが搭載されていました。また、バルブ駆動方式はFヘッド。これはIOE(インテーク・オーバーヘッド・エキゾースト)またはオホッツバルブと呼ばれるもので、吸気側はOHVで排気側はSV(サイドバルブ)という構成でした。

 

1907年にハーレーダビッドソンは同じFヘッドバルブ駆動を搭載した、初めてのVツインエンジンを搭載した市販車を発売しました。これが現在まで連綿と続くVツインエンジンの最初のモデルとなります。写真は1909年製モデルが搭載したVツインエンジンです。

 

4つのカムを搭載。バルブを直接駆動するフラットヘッドの登場!

空冷Vツインエンジンを特徴とするハーレーダビッドソンに、サイドバルブ駆動のフラットヘッドが登場したのは1928年(1929年モデル)です。750cc(45ci)ツインエンジンであり、これはのちにベビーツインと呼ばれ、1974年まで採用され続けた長寿エンジンとなりました。

このフラットヘッドの特徴は、両シリンダーの脇に吸排気バルブが設置されており、各バルブをひとつずつ独立して動かす4カムを搭載しており、視覚的にも凝った造りでした。

これよにより吸排気バルブを狙ったタイミングで駆動できるようになり、メンテナンス性が良好だったことから、当時最先端を行っていたインディアンをハーレーは追撃することに成功したのでした。

ちなみにこのフラットヘッドの開発は、ハーレーの創始者ウィリアム・S・ハーレーと元ハーレーレーサーであったウィリアム・オッタウェイであったと言われています。さらにエンジンのテストライダーを担ったのは、二代目社長となったウィリアム・H・ダビッドソン。これもまた、フラットツインを彩る逸話として語り継がれています。

 

フラットヘッドはスポスタのご先祖も搭載していた!

こうして750ccモデルとしてスタートしたフラットヘッドですが、750ccの「WL」と、1,200ccの「VL」、1,340ccの「UL」と拡大されていきました。

結局のところ、メカニズムとしては凝った構造ながら、バルブ駆動そのものはシンプル。当時としては充分な性能を有しており、さらにメンテナンス性が高いフラットヘッドは広く世に受け入れられたのです。

 

その充分な性能を活かし、後に開発されたモデルが“スポーツスターの元祖”と呼ばれる「モデルK」です。心臓部は「WL」をベースに開発されたサイドバルブエンジンでした。そしてこのモデルKが派生し、伝説的なフラットトラックレーサー「XR」が誕生したのでした。

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