ゴキタン?亀の子?バナナ?ハーレー乗りなら知っておきたいタンクの珍名称3選

投稿日:2026-08-21

「ゴキタン」「亀の子」「バナナタンク」。ハーレー乗り同士の会話で当たり前のように飛び交うこれらの呼び名。初めて耳にした方は「一体なんのこと?」と首をかしげてしまうかもしれませんね。

ハーレーのガソリンタンクには、メーカーが付けた正式名称とは別に、その独特な形状から生まれた「愛称」が数多く存在します。

そこで今回は、そんな個性的な名前を持つハーレー用ガソリンタンクのなかから、代表的な3つのモデルをご紹介します。それぞれの愛称が生まれた背景を、ぜひ楽しんでください。

 

ゴキブリタンク(ゴキタン)は世界初のファクトリーカスタムから生まれた

ハーレーの歴史において、最もインパクトのある呼び名といえば、やはり「ゴキブリタンク(ゴキタン)」ではないでしょうか。

この愛称は、1973年以降のFXスーパーグライドに採用された純正タンクの通称です。低く、横に広がりを持たせたその独特な形状が、あのゴキブリのシルエットを連想させることから、こう呼ばれるようになりました。

形状のルーツは1971年に誕生した「FXスーパーグライド」という一台にあります。当時のハーレーは、AMF(アメリカン・マシン・アンド・ファンドリー)の傘下にあり、欧州製の大型2気筒モデルとの競争に加え、日本製モーターサイクルの台頭も進み、市場環境の変化への対応を迫られていました。そこに映画『イージー・ライダー』(1969年)の大ヒットによる「チョッパーブーム」も重なり、従来とは異なる魅力を持つモデルが求められていたのです。

そこで立ち上がったのが、伝説のデザイナーであり創業家の血を引くウィリーG・ダビッドソンです。ツアラー「FL」のリア周りとスポーツスター「XL」のフロント周りを融合させることで、「FXスーパーグライド」を世に送り出しました。これが、世界初の「ファクトリーカスタム」といわれています。

実は、初代FXには「ボートテイル」と呼ばれる独特の尖ったリアフェンダーが採用されていましたが、不人気のため翌年には標準的なフェンダーへと変更されました。その変遷のなかで定着していったのが、あの低く幅広なタンク形状でした。

1973年以降、FXファミリーに広く採用されたこのタンクは、チョッパー全盛の時代背景も相まって、ハーレー乗りたちの記憶に深く刻まれることとなったのです。苦境のなかで生まれたこのデザインこそ、現代に続く「カスタムハーレー」の原点といえるでしょう。

 

亀の子タンク――「ぽってり形状」は構造上の必然だった

続いては「亀の子タンク」です。こちらは1961年に登場したXLH(スポーツスター)用の大型タンクを指し、容量は資料によって約13〜15リットル(約3.5〜4ガロン)と幅があります。丸みを帯びたそのフォルムが、まるで亀の甲羅のように見えることから、こう呼ばれるようになりました。

この愛称の裏には、実はデザイン以上の「機能的な必然」が隠されていることをご存じでしょうか。当時のスポーツスターが採用していた、Kモデル譲りのフレーム構造に注目してみましょう。シート下のスペースが非常にタイトで、リアバンク側のエキゾーストパイプや、前方寄りにレイアウトされたリアショックなど、多くのコンポーネントが密集していました。

そのためガソリン容量を確保しようとすると、どうしてもタンクを外側へ大きく張り出させる必要がありました。そうして生まれた「ぽってりとした膨らみ」が、結果的に「亀の甲羅」の造形を生んだのです。意図したデザインというよりは、当時のシャーシ構造が導き出した「必然の形」だったといえるでしょう。

比較対象として興味深いのが、同時代のXLCHに採用された小型のタンクです。XLHが快適性や長距離走行を重視した「亀の子」を採用していたのに対して、コンペティション志向(そして後にチョッパーの文脈でも人気を集めた)XLCHはスリムなタンクを搭載していました。

その後、1970年代にフレーム設計が変更されると、シート下のレイアウトに余裕が生まれ、タンクをよりコンパクトに収める構造が可能になりました。その結果、あの独特な張り出し形状は姿を消すことになります。

 

バナナタンクは英国生まれ。海を渡ったカスタムパーツ

最後にご紹介するのは「バナナタンク」です。その名の通り、バナナのように長く細身の形状をしたこのタンクには、少し意外な出自の秘密があります。

実はこのタンク、もともとはハーレー用として設計されたものではありません。1950年代の英国で、トライアンフやBSAといったバイクメーカー向けに供給されていたパーツでした。

開発したのは、英国バーミンガムのメーカー「W E Wassell Limited」の創業者、テッド・ワッセルです。1946年に会社を設立した彼は、当初は英国車用の補修パーツを手がけていました。同社はピーナッツタンクなどでも知られ、細身で個性的なタンク群のひとつとして生まれたのがバナナタンクでした。

この英国生まれのパーツが、大西洋を越えてアメリカのチョッパーカルチャーへと流れ込みました。当時のアメリカのカスタムビルダーたちにも好まれ、ショベルヘッドやパンヘッドのフレームに、このスリムで美しい曲線のタンクが組み合わされるようになっていきます。

英国生まれの補修パーツが、アメリカのハーレーカスタムにおける定番のスタイルとして定着した点は興味深いところです。国境を越えて愛される、まさにチョッパー文化の「自由さ」を象徴するような存在です。

 

Lowbrow Customs製 フリスコマウント バナナタンク ロートンネル

品番:G012471

メーカー:Lowbrow Customs

価格:¥54,945(税込)

タンクサイズ:最大高さ 約18.4cmx横幅 約21cmx長さ 約50.8cm(タブを含む)

「Lowbrow Customs製 フリスコマウント バナナタンク ロートンネル」。イギリスワッセル社のバナナタンクをベースに製作したカスタムタンクです。

オリジナルのトンネル幅よりも幅を広く設計されおり、様々なフレームへマウントが可能です。珍しいハイマウントのバナナタンクです、フリスコチョッパー製作にどうぞ。

【コック位置】左後方 1/4NPT
【ガスキャップ】カム式ガスキャップ(弊社品番 8600-2725 など)
【トンネルサイズ】幅 約6cm x最大深さ 約4cm

 

Lowbrow Customs製 フリスコマウント バナナタンク ロートンネル

品番:G009204

メーカー:Lowbrow Customs

価格:¥61,182(税込)

タンクサイズ:最大高さ 約18.4cmx横幅 約21cmx長さ 約50.8cm(タブを含む)

上掲タンクの別仕様。コック位置を合計3か所設けることでハーレーに使用可能な設計に変更されています。ガスキャップは96年以降のスクリュー式キャップが使用可能になっています。

【コック位置】左右後方1/4NPTx2か所・左側底面3/8NPT
【ガスキャップ】96年以降スクリュー式ガスキャップ
【容量】1.8ガロン ( 約6.8L)
【トンネルサイズ】前方幅 約6.4cm x最大深さ16.4cmx後方幅 約6cm

 

Lowbrow Customs製 2.6ガロン スーパーバナナタンク ミドルトンネル

品番:G009874

メーカー:Lowbrow Customs

価格:¥71,082(税込)

タンクサイズ:最大高さ 約18.4cmx横幅 約24.8cmx長さ 約50.8cm(タブを含む)

こちらはタンク容量2.6ガロンの別仕様。コック位置合計3か所あり。ガスキャップは96年以降のスクリュー式キャップが使用可能になっています。

【コック位置】左右後方1/4NPTx2か所・左側底面3/8NPT
【ガスキャップ】96年以降スクリュー式ガスキャップ
【容量】2.6ガロン ( 約9.8L)
【トンネルサイズ】前方幅 約6.4cm x最大深さ約12cmx後方幅 約5.1cm

 

愛称でたどる、ハーレータンクの個性

今回ご紹介した3つのタンクには、それぞれまったく異なる背景があります。

  • ゴキタン: ファクトリーカスタムの象徴

  • 亀の子: 当時のフレーム構造の制約から生まれた偶然の産物

  • バナナ: 英国から海を渡り、チョッパー文化に溶け込んだ異国のパーツ

「この形状にはどんな歴史があるの?」「どんな由来だったんだろう?」そんなふうに愛車を眺めてみると、ハーレーがより愛おしく感じられるはずです。ぜひご自身のカスタムのヒントとして、この歴史の物語を楽しんでみてください。

 

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