なぜスタージスは『バイク乗りの聖地』と呼ばれるのか

投稿日:2026-08-25

「スタージスで会おう!」――アメリカのハーレーバイカーの間では、これが合言葉のようになっているといわれています。スタージスは、普段は人口約7,000人のサウスダコタ州の小さな町ですが、毎年8月を迎えると世界中から集まったハーレーバイカーで埋め尽くされます。その光景は、さながら巨大な夏祭りです。

今では「ハーレー文化の象徴」として世界中にその名を知られているスタージス・モーターサイクル・ラリーですが、その歴史をたどると、意外な事実が見えてきます。

なんと、このイベントを最初に立ち上げたのは、ハーレーではなく「インディアン」のディーラーだったのです!そこで今回は、1938年に始まり、長い歴史を重ねてきたスタージスの歴史と、ハーレーとのつながりを紐解いていきましょう。

 

スタージスという町について

舞台となるのは、サウスダコタ州の北西部、雄大な自然が広がるブラックヒルズ近郊に位置する小さな町・スタージス。1878年、米陸軍の駐屯地「フォート・ミード」に隣接する形で誕生したのが、この町の始まりでした。当時のブラックヒルズ一帯はゴールドラッシュに沸いており、駐屯地は入植者や鉱夫たちを守る役割も担っていたといわれています。

その後、スタージスは鉱山の町として発展し、長く静かな歴史を歩んできました。普段の人口は約7,000人。アメリカにはどこにでもあるような、いわゆる田舎町です。

ところが、毎年8月に開催されるモーターサイクル・ラリーの期間中だけは、その様相が一変します。世界中から数十万人規模のバイカーが押し寄せ、町は爆音と熱気に包まれます。普段の静かな日常と、圧倒的な非日常が交差するこのギャップこそが、スタージスのもつ独特の魅力です。

 

始まりは「ジャックパイン・ジプシーズ」というモータークラブ

この世界的なイベントの原点は、1930年代半ばに発足した、地元のモーターサイクルクラブ「ジャックパイン・ジプシーズ(Jackpine Gypsies)」にあります。

創始者であるJ.C.“パピー”ホエル(Pappy Hoel)とその妻パールは、美しい自然を駆け抜ける「ジプシーツアー」やレースイベントを企画・開催しました。1938年8月に開催された、アメリカモーターサイクル協会(AMA)公認の「ブラックヒルズ・クラシック」と呼ばれる小さなレースとオートバイの祭典が、現在のスタージス・ラリーの記念すべき第一歩となったのです。

当時の彼らにとって、自分たちが愛するモーターサイクルと土地の魅力を仲間たちと分かち合うことが、純粋な目的でした。

 

「インディアン」のディーラーが始めたラリーだった

ここで非常に面白い歴史の裏側があります。スタージスの生みの親であるパピー・ホエルは、当時、地元で「インディアン・モーターサイクル」のディーラーを営んでいたのです。

今でこそ「ハーレーの聖地」として知られるスタージスですが、その源流はなんと、ライバルブランドであるインディアンのディーラーが中心となって開催したレースイベントだったのです。

インディアンモーターサイクル公式日本サイトでも、この地を拠点とするジャックパイン・ジプシーズによるレースが、世界最大のラリーへと発展した歴史が紹介されています。

「ハーレーの聖地で開催されるイベントの源流が、実はインディアンにあった……」なんとも不思議な物語なのです。

 

なぜ今は「ハーレーの聖地」として語られるのか

では、インディアンのディーラーが始めたイベントが、いかにして「ハーレーの聖地」へと変貌を遂げたのでしょうか。イベントの歴史が深まるにつれて、アメリカを代表するモーターサイクルブランドであるハーレーダビッドソンとの結びつきは自然と強まっていきました。

その象徴的な出来事の一つが、1980年に登場した「FXBスタージス」です。ハーレー自身がイベント名を冠したモデルをリリースしたことで、スタージスとハーレーの結びつきはさらに定着していきました。

現在では、毎年数十万人規模のバイカーやファンが世界各地から集結し、会場ではハーレーダビッドソンの存在感がとりわけ大きいことから、いつしか「ハーレーの聖地」と呼ばれるようになったというわけです。

 

注目モデル:FXBスタージスとは

ここで、歴史の転換点に登場した名車「FXBスタージス」についても少し触れておきましょう。

  • 登場と背景: 1980年にリリースされた「FXSローライダー」の派生モデルです。創業家の血を引くデザイナーであるウィリーG・ダビッドソンが、開発に携わりました。

  • メカニズム: 排気量80立方インチ(約1,340cc)の、エボリューション前夜のショベルヘッドエンジンを搭載。プライマリー側とセカンダリー側の両方に「ベルトドライブ」を採用した初のモデルです。

  • 希少性: 画期的な機構を備えながらも1982年には生産を終えたため、現存する車両は非常に価値が高いプレミアムモデルとして、マニアの間で高く評価されています。

 

インディアンから始まり、ハーレーの聖地へ

スタージスは、最初から「ハーレーの聖地」だったわけではありません。インディアンのディーラーが仲間と始めた小さなイベントが、時代のうねり、そしてハーレーダビッドソンの成長とともに歩むなかで、いつしか世界中のハーレーバイカーが集う文化の象徴へと育っていった――これがスタージスという土地が持つ、本当の歴史なのです。

「スタージスで会おう!」この言葉の裏には、ブランドの垣根を越えたモーターサイクルへの純粋な愛情と、1938年から続く歴史の重みが息づいているのでしょう。

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