ハーレーエンジンの歴史~パンヘッド

投稿日:2015-02-27

ハーレーは、車名やファミリー名だけでなく、エンジン形式で呼ばれることも多く、エンジンの歴史がハーレーの歴史であるとさえ言えるかもしれません。
ここでは、オーバー・ヘッド・バルブエンジン(以下OHV)の第二世代モデルである「パンヘッドエンジン」について紹介します。

パンヘッドエンジン開発秘話

戦火が激しくなる第二次世界大戦中、ハーレーはアメリカ政府の要求により軍用車を作りながら、復活の時を待っていました。戦争が終わると、アメリカ経済は徐々に回復し始め、ハーレーも一般ユーザー向けの生産ラインを取り戻します。目指したのは新たなエンジンの開発です。
ハーレー初のOHVのビックツインである「ナックルヘッドエンジン」は、主力エンジンとして長らく君臨していましたが、開発からすでに10年以上が経過しており、古さが否めなくなっていました。
求められていたのは、次世代を担う信頼性の高いエンジン。そして、1948年にロッカーカバーが鍋のように見える独特の造形を持つエンジン「パンヘッドエンジン」が登場しました。

パンヘッドエンジンを搭載したハーレーたち


初期のパンヘッドエンジンは、ナックルヘッドエンジンと同様に1000ccのELと1200ccのFLに採用されました。最高出力は50psでしたが、トラブルの対策がしっかりと施されたため、信頼性の高いエンジンに生まれ変わりました。
1950年には吸気ポート拡大により出力が向上し、最高出力が55psに変更され、1952年にはFL系のシフトがハンドシフトからフットチェンジに変更されています。そして1955年には、最高出力60ps/5,400rpm、最大トルク8.98kgm/3,200rpmを引っ提げてスポーツモデルのFLH1200が登場します。

パンヘッドエンジンの改良点

ナックルヘッドエンジンの設計が優れていたため、パンヘッドエンジンは基本的な設計を継続しつつ弱点を改善した造りになっています。
オーバーヒートについては、シリンダーヘッドを鉄製からアルミ製に変更して放熱性を高めることで防止。不評だったオイル漏れについては、アルミ製ロッカーカバーでシリンダーヘッド部分を覆うことで改善しました。さらには、オイルの循環性を高めるためにシリンダー内に通路を設置しています。

パンヘッドエンジン時代の技術革新

パンヘッドエンジンが開発された1940年代から1960年代は、次々に新しいモデルが発表された、技術革新の時代だと言えます。
1948年にスプリング式のフロントフォークを持つモデルとして登場し、「ヨンパチ」と呼ばれましたモデルは、翌年に廃止されてしまったため「幻のハーレー」と言われています。
1949年には、テレスコピックフォーク(油圧式のフォーク)を搭載した「ハイドラグライド」、1958年には、スイングアームを採用した「デュオグライド」、さらに1965年には、キックを廃してセルスターターを採用した「エレクトラグライド」が販売されました。

終戦を待って、やっとの思いで開発されたパンヘッドエンジンは、ハーレーオーナーを納得させるだけの進化を遂げていました。
そのため現在でも、オールドハーレーファンに人気の高いエンジンとなっています。

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