ハーレーエンジンの歴史~ナックルヘッド

投稿日:2015-03-02

ハーレー・ダビットソン社は、100年近くもVツインにこだわってエンジンを開発してきました。その第一歩がオーバー・ヘッド・バルブエンジン(以下OHV)の第一世代エンジンである「ナックルヘッドエンジン」です。ここでは、OHVエンジンの基礎である「ナックルヘッドエンジン」について紹介します。

ナックルヘッドエンジン開発秘話

ハーレーが1929年に開発したバルブとピストンが平行な「フラットヘッドエンジン」は、現在まで脈々と続くVツインの基礎となったエンジンですが、メカニズムが大きく異なります。当時の技術では、現在のようにバルブをシリンダーの上に配置する方式が難しかったため、サイドバブル方式が採用されていました。
このエンジンは、シンプルな構造でメンテナンスがしやすいと評判である一方、燃焼効率が劣り、非力さが否めません。
当時のアメリカはモータリゼーション時代に突入し、国内ライバル社のインディアンだけでなく、イギリスのモーターサイクル各社が最新技術のOHVを搭載したモデルを次々と発表しました。そういった状況に危機感を持ったハーレー社が、威信をかけて1936年に発表したのが、ハーレー初のOHVエンジン「ナックルヘッドエンジン」なのです。

ナックルヘッドエンジンの特性

排気量約988cc、40ps/4,500rpmを誇るOHVの新型エンジンは、拳のように見えるヘッド形状から「ナックルヘッド」と名付けられ、スポーツタイプのEとEL(圧縮比はEが6.5でELが7.0と異なる)に搭載されました。その実力はEモデルのトップスピードが150km、Eモデルをベースにした記録挑戦用モデルでは驚愕の218kmを達成するなど、80年近く前のエンジンとしては十分すぎる性能でした。

ナックルヘッドエンジンの進化

画期的なエンジンであるナックルヘッドでしたが、初期にはオイル漏れを起こしたり、ノイズが大きいなど、数々のトラブルを抱えていました。ハーレーの技術者はより高品質なエンジンにするために、改良を重ねます。
1941年には、排気量を1200ccにアップすることに成功。48ps/5,500rpmのスペックで最高速度160kmを叩き出す快挙を遂げ、スポーツモデルのF、FLに搭載しました。
ナックルヘッドエンジンは長きに渡り搭載され続けますが、1948年にパンヘッドエンジンが登場したことにより第一線を退きました。

ナックルヘッドエンジンを搭載したハーレーたち

1936年 ナックルヘッドEL

ハーレー初のOHV988ccエンジンを搭載したモデル。初期型モデルのみロッカーカバーのボルトが円形。1941年のFL1200ccデビュー後も販売され続け、1948年にパンヘッドにバトンを渡すまで生産されていました。

1937年 ナックルヘッドE

ELとは圧縮比が異なる派生モデル。わずか1年程度で生産を終了しますが、1941年に復活。その後は1948年にパンヘッドにバトンを渡すまで生産されていました。

1941年 ナックルヘッドFL

現在に通ずる排気量1200cc、前後16インチホイールに変更された記念すべきモデル。工業デザイナーのブルックス・スティーブンスによって、全体がストレートになるようにデザインされたスタイリッシュなモデル。

1942年 ハーレーダビッドソンF

FLより1年遅くデビューしましたが、スペック、スタイル共に差異は見当たりません。
ハーレー初のOHVエンジンであるナックルヘッドエンジンは、現在も多くのライダーに支持されており、ナックルヘッド搭載モデルは根強い人気があります。状態のよいものは少なくなってきていますので、気に入ったモデルを見つけた際は、悩まず購入することをおすすめします。

このページのTOPへ