ハーレーエンジンの歴史~サイドバルブ

投稿日:2016-09-27

ハーレーのエンジンは、年代によって進化しながら形を変えて来ました。ナックル、パン、ショベル、エボ、ツインカム…、そして来シーズンにはミルウォーキエイトという新型エンジンが投入されます。これら歴代のエンジンはOHV(オーバーヘッドバルブ)ですが、それ以前に作られていたのがOHC(オーバーヘッドカムシャフト)のサイドバルブでした。

歴代最長記録保持者

数ある歴代エンジンの中で一番長く製造されていたエンジン、それがサイドバルブです。1930年のデビューからショベル時代の1974年まで、サービカーと呼ばれる三輪車、今で言うトライクのエンジンとして44年間も製造されていました。

サービカーは、警察の駐車禁止取り締まりや郵便配達、路上で壊れた車の整備に向かったり、はたまたアイスクリームの路上販売用だったりと、幅広い分野の業務用バイクとして使われてきましたが、その一つの理由としてメンテナンス性の良さがあげられます。これは、第二次世界大戦時に軍用バイク(WLA)として採用されていたことからもお分かりいただけるでしょう。

OHVとの違いはどこに

OHV(オーバーヘッドバルブ)は、カムがシリンダーブロック側に位置し、プッシュロッドがロッカーアームを押し上げてバルブの開閉をしています。ツインカムはチェーン駆動になっていますが、基本は同じです。これに対してOHC(オーバーヘッドカムシャフト)のサイドバルブは、カムシャフトによって直接バルブを押し上げるのです。OHVはピストンの上でバルブが開閉しますが、サイドバルブはピストンの真横に位置し、同じ高さの場所で開閉します。ヘッドはOHV車ではロッカーアームが入っていますが、サイドバルブはフィンのついたただのフタです。4本のバルブをカムが直接動かすので4カム。スポーツスターの元祖がここにあります。

オイルタンクはどこに

現在多く見られるWLのフレームは”シングルクレードルフレーム”と呼ばれ、ネックから下に伸びるパイプが1本だけのリジッドフレームで、シート下には6ボルトのバッテリーが置かれているだけの非常にシンプルなレイアウトです。ちなみにマグネトー化するとそのバッテリーも無くなるため、スカスカのボバースタイルとして定番カスタムでもあります。

現行ハーレーのレイアウトと比較すると、オイルタンクが見当たりません。では、一体どこに配置されているのでしょうか。それは分割タンクが答えです。左側がガソリンタンクで、右側がオイルタンクになっているからなのです。今でこそ斬新なレイアウトですが、当時はそれが一般的でした。

サイドバルブは排気量が3種類

750ccの「WL」と、1,200ccの「VL」、1,340ccの「UL」と、とそれぞれに排気量は違いますがすべてサイドバルブ。その後「Kモデル」スポーツスターの元祖が登場します。サイドバルブは今でも大人気で、結構な台数が走っていますが圧倒的に残っているのは750ccの「WL」が多いようです。なお、ビッグツインに比べてしまうと、スピードもパワーも劣りますが、それでも日本中を旅するツワモノもいるくらいに丈夫なエンジンで、今の交通事情でも十分に適応してしまうところが、サイドバルブの凄いところでしょう。

なぜWLが残ったのか

それではなぜ排気量1,200ccでも1,340ccでもなく、750ccのベビーツイン「WL」が残ったのでしょうか。

まず、排気量1,200ccの「VL」は、排気量750ccの「WL」とフレームが共通フレームのシングルクレードルフレームなので、そのエンジン重量に耐えられずにフレームが折れるなどの報告も多数あったようです。

また、「UL」の排気量は1,340ccでさらに大きなシリンダーですし、ハーレー社としてはサイドカーとしても使えるのをセールスポイントとしたようで、フレームはダブルクレードルでした。強度こそ高まりましたが、オイルタンクはシートの下、ビッグツインと同じデザインになりました。

これらVLとULは、どちらもタマ数が少ないので、市場に出たとしても非常に高価です。一方WLは1974年まで作られたことや、戦時中にも多く生産されたので、今でも一番多いサイドバルブとなったというわけです。

メンテナンス性に優れたサイドバルブですが、あくまでもビンテージハーレーであり、トラブルが付きまとうことは間違いありません。しかし、どれほど古いエンジンでもVツインエンジンならば、海外製パーツを含めればまだまだアフターパーツが手に入るところもハーレーならでは。バッテリーもすんなり手に入りますので、走ることに関する懸念点や不安は少ないでしょう。

OHVとは一味も二味も異なるメカニカル感や、まったりとした走りで、サイドバルブを存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。

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