【不朽の名作エンジン】〜ショベルヘッド編〜
ハーレーの名作エンジンを紹介する【不朽の名作エンジン】シリーズでは、初回にフラットヘッド、次にナックルヘッド、前回はパンヘッドをご紹介しました。
パンヘッドはアルミニウム製部品を採用し、オイル管理を容易にすることで熱管理を高めた、信頼性の高いエンジンでした。
今回はいよいよショベルヘッドの登場です。それはどんなエンジンなのでしょうか?
ョベルヘッドはOHVエンジンの3代目!
これまでご紹介したように、ハーレー製OHVエンジンの源流は1936年に登場したナックルヘッドにあります。この鋳鉄製の1カムOHVエンジンは高性能を誇りましたが、オイルラインと熱管理に課題がありました
そこで1948年に登場したのがパンヘッドです。アルミニウム製部品を採用し、オイルラインを変更することで信頼性を飛躍的に向上させました。1965年にはセルフスターターを搭載し、現代化も実現しました。
ショベルヘッドが最初に登場したのは1958年のことですが、これはベビーツインをベースにしたスポーツスター用で、排気量は883ccの4カム構造でした。
アイアンスポーツについては過去記事をご覧ください。
さて、本題となるビッグツインのショベルヘッドが登場したのは1966年です。1984年にエボリューションエンジンに引き継がれるまで、ハーレーの屋台骨を支え続けました。
ちなみに、ショベルヘッドの「ショベル」とは、ロッカーアームカバーの形状が「ショベル」に似ていることに由来します。
ショベルヘッドで海外勢に立ち向かう!
ショベルヘッドが投入された当時、ヨーロッパと日本からの輸出がアメリカ市場を席巻していました。パワフルで扱いやすいトライアンフ、BSA、ノートンといった英国車や、速さと信頼性、高級感を兼ね備えたBMW、軽量モデルではドゥカティも対米輸出を増やしていました。
日本車も1965年にDOHC並列2気筒エンジンを搭載した「CB450」が発売され、ハーレーの立場が危うくなっていきました。
そこで成功を収めたアイアンショベルの技術をビッグツインに投入して誕生したのが、いわゆるアーリーショベルです。簡単に言えば、パンヘッドのエンジンの腰下にショベルヘッドを搭載した初期のショベルです。アーリーショベルでは発電方法としてジェネレーター(直流発電)を採用していました。ハーレーはこのショベルヘッドで海外勢と戦おうと試みたのです。アーリーショベルは1966年から1969年まで生産されました。
1970年から生産されたのがコーンショベルです。新設計のクランクケースが採用され、従来の平らでピーナッツ形のカムカバーが円錐型に変更されました。また、発電方法が変更され、オルタネーター(交流発電)が採用されました。
ショベルヘッドはハーレーダビッドソンらしい鼓動感を持つエンジンでしたが、大排気量ツインエンジンによる振動や、生産管理技術によるオイル漏れとそれに伴うオーバーヒートなどの課題は完全には解決できませんでした。それでもショベルヘッドは、エボリューションにハーレーの伝統である空冷大排気量OHVエンジンを引き継ぐことに成功しました。