キックが怖い…ケッチンを恐れずハーレーをキックするには?

投稿日:2016-09-02

ケッチンとは、キックスタート時にキックアームをけり下ろした瞬間に、点火タイミングの狂いや進角装置の不良等によるエンジンの逆回転でキックアームが跳ねあがることを指します。小排気量エンジンならそれほどの力ではないので大事には至りませんが、ハーレーのような大排気量バイクでは、その反動は凄まじいものがあります。

酷いときには…

ケッチンによる被害は数多くあります。「イテッ」と飛び跳ねる程度ならまだしも、中には骨折、膝の脱臼、腱の切断などといった惨劇も多数あります。シリンダー内での爆発が中途半端で、クランクが正常に回り切らずに少し戻ってしまうのが原因ですが、その要因には点火タイミングのずれなどがあげられます。特に、ポイントやダイナなどのセミトラの車両は要注意です。逆に何らかの原因で圧縮が抜け、いつも通りに全体重を乗せてキックし、スカッと何の抵抗もなく地面を直撃し、膝が逆に曲がってしまったという事例もあります。いずれにしろキック始動には、適切な知識と、充分な注意が必要です。

重要なのはタイミング

セルオンリーの車両では心配ありませんが、セル・キック併用車や、キックオンリーのハーレーに乗っている方は、まずは点火タイミングのチェックを怠ってはいけません。正しいタイミング位置の前に自分のハーレーの点火タイミングについて知りましょう。ポイントなのか、はたまたセミトラかフルトラか。ポイントカバーを開けてみれば一目瞭然です。

ポイント車やセミトラではタイミング調整が必要になります。これがあっていないと、エンジンの掛かりが悪く、アイドリングも安定せず、アフターファイヤーがやたら鳴るなどの症状が挙げられます。ショベルヘッドまではクランクケースにタイミングホールという穴があり、ここからピストンの上死点などのマークが見られます。その時にカム山がポイントのヒールを押し上げてポイントが開く状態に…。とここの調整には多少のなれが必要なので、ショップでタイミングを出してもらい、その位置をマジックなどでマークすると良いでしょう。一般的に、タイミングが早いと掛かりは良くなりますが、ケッチンの確率は高くなると言われています。

ケッチンを防ぐには

キックオンリーで、タイミングばっちり&エンジンの掛かも良いハーレーでも、たまにケッチンを喰らいます。これはシリンダー内に残った燃料のいたずらだと考えられます。いつもなら3回ほどで掛かるのに、今日に限っては掛からない…。そんな時こそ冷静になり、しばし休憩しましょう。意地になってケリまくるとケッチンを喰らい、疲れているところに痛みの追い打ちがあるかもしれません。大概の場合は、休憩することでシリンダー内の余計な混合気が気化して無くなることが殆どです。

もしものために

ハーレーのキックは、決して軽いものではありません。痩せている方などは左足を高々と上げて勢いを付けている方もいます。その勢いでけり下ろした瞬間に跳ね上げられるのですから、そのカウンターたるや強烈なパワーです。日頃からクランクを回した瞬間に、下に向かう力を抜くことを覚えましょう。言葉にすると難しそうですが、慣れればそれほどでもないので、その習慣さえつけておけば、もしもの時に痛みを最小限に抑えられます。

ケッチンをなくすには

ケッチンを喰らわないための最善策としては、
1:タイミングを合わせる(タイミングを知る)。
2:余計な混合気が入っている時には無理にキックをしない。

この2つでしょう。しかし、完全にケッチンをなくすというのは不可能です。

また、可能な限りケッチンを喰らわないで済むもうひとつの方法としては、「エンジンがすぐに掛かるよう、最適なセッティングを保つ」ということでしょう。最近ではエボリューションでもキックオンリーという強者もいますが、排気量が大きく、圧縮比が高いということは、ケッチンの威力とイコールですので、エボリューションでケッチンを喰らうのはかなり危険です。そこでキックオンリー車両は、エンジン始動をベストなセッティングに保つことが危機回避の最も有効な手段と言えます。しかしエンジンには個体差がありますので、どうすれば始動性が向上または改善されるのかという答えは、なかなかに難しい問題です。あまりにも掛かりが悪いときには、点火タイミングシステムの交換も視野に入れておきましょう。

ポイントに換えるにはこちらのセットが便利です。ポイント車の強みは、どこでポイントやコンデンサーが壊れようと、予備パーツを持っていれば容易に交換ができ、タイミング調整も分かりやすいので、一度コツを掴めばいつでもできるということでしょう。またパーツも安価なのでコスト面でも助かります。

セミトラの代表と言えばダイナではないでしょうか。タイミング調整は必要ですが、その後のメンテナンスはポイントよりは少なく、壊れるまでメンテフリーと言っても過言ではありません。

フルトラとは、フルトランジスタの略。カム山の回転で点火時期を決めるポイントとは違い、タイミングをコンピューターが認識して点火します。ショベルヘッドの後期からは純正でもフルトラになっていますが、フルトラはセルでの始動が基本になつていますので、キックオンリーのハーレーとの相性では、あまり良い話を聞きません。それでも最新の技術力やメンテナンスフリーは魅力的です。試してみる価値はあるでしょう。

最善を探りケッチンとおさらば

何より、さりげなくキックでエンジンを掛けるという行為は、ハーレーオーナーにとってカッコイイ事この上なしです。点火以外にもキャブレターとの相性など、キック始動によるエンジンの掛かりを良くするには、あらゆる可能性を探る必要がありますが、キック始動時の自分の癖や、愛車のコンディションなどを把握し、ケッチンの危険性を最小限に抑えられるベストな方法を探りましょう。

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